
※登場人物は全て仮名です。
プロローグ:化粧品会社の面接、意気込みだけは一人前
大学2年生の秋、私は人生初の就活に挑んでいた。志望したのは誰もが知る化粧品会社。販売員になりたくて、メイクの話なら何時間でもできる自信があった。
証明写真は駅前の写真館で気合を入れて撮影。スーツを着て、眉毛もカミソリで整えてお化粧もバッチリ。
写真館のお姉さんにも「はい、いい表情ですよ」と褒められて、内心ガッツポーズ。加工もしてもらって、我ながら完璧な仕上がりだった。
履歴書を郵送し、一次面接の案内が届いた時は小躍りしました。
そして迎えた面接当日、私は朝から念入りにメイク、アイシャドウの色は面接官に好印象を与えるベージュ系、リップは控えめなピンクで清潔感をアピール。
鏡を見て「よし、完璧」と自分に言い聞かつつ家を出た。
面接会場に着くと、周りは私と同じようなリクルートスーツ姿の女性ばかり。でも、なんだかみんな自分より肌がツヤツヤしている気がする。照明のせいかな、と思いながら順番を待った。
面接官は30代くらいの女性社員。柔らかい笑顔で迎えてくれたけれど、私の顔を見た瞬間、ほんの一瞬だけ目が止まった気がした。気のせいだと思いたかった。
「志望動機を教えてください」
緊張しながらも、準備していた答えを述べた。化粧品が好きなこと、美容の力で人を笑顔にしたいこと。面接官は優しく頷いてくれたけれど、なんとなく視線が私の顔の下半分に向いている気がした。
やがて面接が終わり、緊張の糸が切れた私は友達との待ち合わせ場所へ向かった。(お茶の約束してたのですよね)カフェで友達と合流すると、彼女は私の顔をまじまじと見て、開口一番こう言った。
「ねえ、ちょっと聞いていいかな?その顔の産毛、剃らずに面接行ったの?」
「え?」
「いや、なんか顔全体がモヤッとしてるっていうか。あと眉毛もなんか変だよ。左右で形違わない?」
友達の言葉に、凍りついたわたしは慌ててスマホのカメラで自分の顔を確認。画面に映った自分の顔をどんどん拡大してみると、そこには見たくない現実が広がっていた。
鼻の下には、うっすらとヒゲのような産毛。頬も、よく見ると細かい毛がびっしり。おでこも、光の加減でモヤッとした影ができている。えっ?残ってた?
そして眉毛。カミソリで整えたつもりが、左右で太さが違う上に、眉尻の角度もバラバラ。さらに、面接前に髪をアップにまとめていたせいで、うなじの産毛までわっさわさ状態。
「え、私ずっとこの顔、このムダ毛だらけで美容系の面接行ってたの...?」
その時の私のショックは計り知れなかった。
証明写真は加工してもらっていたから気づかなかったけど、実物の私はこんなにも「手入れしていない顔」だったのかと・・・。
過去の免許証やバイトの履歴書に使った写真を思い出して、さらに悶絶した。あれも、これも、全部産毛モサモサの状態で撮っていたんだ。
「美容系の会社だし...面接官たち、絶対気づいてたよね...」
思い返せば、眉毛を整え始めたのは高校生の時だった。雑誌で「眉毛の形で印象が変わる」という特集を読んで、見よう見まねでカミソリを使い始めた。安かったしねぇー
最初は恐る恐る。細眉がトレンドだと聞けば細く剃り、太眉が流行れば伸ばして整える。でも、カミソリでの眉毛整えって、実はすごく難しい。
ある時、眉頭を削りすぎて左右非対称になり、焦って修正したらさらに細くなるという無限ループに陥った。結局、眉ペンシルで太く描いて誤魔化したけれど、汗をかくたびにトイレで眉毛チェックをする羽目になったことも
友達には「眉毛、毎回形違わない?」と笑われたこともある。でも、それが普通だと思っていた。カミソリで整えるって、そういうものだと。
顔の産毛に至っては、存在すら意識していなかった。たまに鼻の下が気になった時だけ、ボディ用のカミソリでササッと剃る程度。でも、それが逆効果だったなんて。
話を戻そう。あの面接の日のことだ。
カフェで友達と別れた後、私はスマホで必死に調べた。「顔 産毛 処理方法」「眉毛 整え方 初心者」。
検索結果には、美容サロンでの顔剃りや、眉毛サロンの情報が並んでいた。でも、学生の私にはそんな予算はない。もっと手軽に、自分でできる方法はないのか。
そこで出会ったのが「眉毛シェーバー」だった。
画面には、小さくて持ちやすそうな電動シェーバーの写真。「眉毛の細かい調整ができる」「顔全体の産毛ケアにも使える」「肌を傷つけにくい安全設計」。レビューを読むと、もっと早く買えばよかったの声が多数
価格も、サロンに行くことを思えば手頃。私はその場でポチった。翌日には届くという。
その夜、私は鏡の前で自分の顔と向き合った。証明写真と実物の顔。こんなにも違うのか。いや、違うんじゃない。証明写真が加工されていただけで、実物の私はずっとこうだったんだ。
面接官の目に止まったあの一瞬。あれは、きっと私の産毛や整っていない眉毛を見ていたんだ。美容系の会社なのに、自分の顔の手入れもできていない学生。そう思われたに違いない。
「次の面接では、絶対に失敗しないぞ」
私は心に誓った。
翌日、眉毛シェーバーが届いた。箱を開けると、想像以上に小さくて可愛らしいデザイン。充電式で、防水機能もついている。
さっそく使ってみた。まずは眉毛から。カミソリと違って、刃が小さくて細かい調整がしやすい。そして、何より安全。肌に当てても痛くないし、削りすぎる心配もない。
左右対称に整えることができた。今までカミソリで苦労していたのは何だったんだろう。まぶたのデリケートな部分もケア出来る
次に、顔の産毛。鼻の下、頬、おでこ、あご。シェーバーを優しく滑らせると、産毛がスルスルと処理されていく。終わった後、鏡を見て驚いた。
顔色が明るい。肌がツルツル。メイクのノリも全然違う。
そして気づいた。今まで「私はメイクが好き」と言いながら、一番大事な土台を疎かにしていたんだと。
一次面接の結果は、残念ながら不合格だった。でも、それは予想していた。あの状態で合格するわけがない。
ただ、諦めるつもりはなかった。別の化粧品会社にエントリーし、二次面接まで進んだ。
今度は違う。眉毛シェーバーで眉毛を整え、顔全体の産毛も処理した。うなじも忘れずに。鏡に映る自分は、以前とは別人のように清潔感があった。
面接当日。面接官は前回と同じくらいの年齢の女性社員だったけれど、今回は顔を見られても自信があった。
「肌、きれいですね」
面接官が笑顔でそう言ってくれた。
「ありがとうございます。最近、スキンケアと産毛ケアを見直しまして」
「いいことですね。美容に携わる仕事をするなら、まず自分が手本にならないといけませんから」
その言葉が、胸に響いた。
結果は合格。インターンシップに参加できることになった。
友達に報告すると、彼女は「言ってよかったでしょ?」と笑った。確かに、あの時の友達の一言がなければ、私は今も産毛だらけの顔で面接を受け続けていたかもしれない。
眉毛シェーバーは、今では私の必需品だ。旅行にも必ず持っていく。お風呂でも使えるから、毎日のケアが習慣になった。
あの恥ずかしい経験は、私にとって大切な教訓になった。見た目を整えることは、決して表面的なことじゃない。自分を大切にすること、相手に敬意を示すこと。それが美容の本質なんだと、今なら分かる。